藤井クリニック 藤井まゆみ
緒言
帯状疱疹の皮疹が軽快しても痛みがとれないことがある。特に高齢者に多いといわれている。薬物治療を行ったが3年以上痛みが軽快しない患者を治療する機会を得たので、その経験を述べたい。
症例
【症例】70代後半、男性。3年前に右前頭部、額、眼窩、眼窩下に帯状疱疹を発症した。身長約160cm、体重約65kg、血圧110/70mmHg。
問診:筋肉が攣りやすい、手足が痺れやすい、口が苦い。
望診:筋肉質、眼の充血、皮膚が乾燥し硬く荒い。
脈診:浮沈中間、弦。
舌診:舌体紅、舌苔黄白色薄。
腹診:腹力やや強、両側胸脇苦満。
【既往歴】25年前に心筋梗塞でステント手術。
【自覚症状】どの症状が軽快したのかよく判るように、症状を3つに分けた。
①眉と額を触ると痛む。
②眼窩と眼窩下部にズキズキ、ジーンとした持続痛。仰臥位では収まる。
③朝洗顔後、目を閉じる時に引きつるような痛みが走り、午前11時頃まで続く。
【治療経過】陰虚火旺と瘀血により、滋陰降火湯と桂枝茯苓丸を処方した。週に1回鍼治療を行った。
考察
この症例は三叉神経知覚繊維の上の2枝、視神経と上顎神経の障害である。
症状の期間が長いこと、実証であることと部位から、経穴として陽輔、内庭、厲兌、足竅陰を選んだ。
X年12月~X+1年8月の治療で効果が現れ、最初の痛みを10とすると0~4に軽減した(編注:表を省略)。
この症例は、高齢で、漢方医学的所見から肺虚肝実証である。望診、舌診から殷墟火旺である。25年前の心筋梗塞、筋肉が攣りやすい、手足が痺れやすい、皮膚が乾燥し硬く荒いという症状は三焦(さんしょう)の陰虚火旺が原因となっていると考えられる。
三焦は津液が全身を巡る通路として扱われることが現代では標準的な考え方である。
一度三焦の液の不足が生じ長期にわたると内服では効果が難しく、鍼による経絡の刺激で三焦(間質)の液が潤い、流れが回復したと考える。
経絡治療の際には三焦の概念を常に念頭に置くべきである。
第71回日本東洋医学会総会学術講演会で報告しました。
『漢方の臨床』68巻9号(2021)別刷より、引用/要約
※考察はかなり省略しました。詳しくは『漢方の臨床』を!