スタディ@藤井クリニック

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加齢による聴力正常者の語音聴力変化状況

〇藤井まゆみ1)、岡崎健二2)、牧山清3)

藤井クリニック1)、岡崎耳鼻咽喉科医院2)、日本大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科3)

緒言:語音聴力検査の年齢的変化を考慮する分かり易い物差しは見つからないが、語音弁別能は80歳代以上で急激な低下を認める、という報告されている。認知機能と言葉の聞き取りについて、末梢蝸牛レベルと中枢聴覚路の関係を調べたり、加齢性聴覚障害の初期病態・症状に関する研究は行われているが、巷の診療所で、患者さんに、聴力が年齢相応に正常であるかどうかを説明するためには、役立たない。

方法:耳疾患の既往のない年齢的に正常聴力を示す女性について、50代前半から75歳まで1年毎に標準純音聴力検査・標準語音聴力検査を行った。また耳疾患の既往のない70歳~90歳代の数人の検査も行った。

結果:耳疾患の既往のない年齢的に正常聴力を示す女性は70歳で語音聴力閾値に達したが75歳でも、その値にとどまった。標準語音聴力検査では、82歳までは語音弁別能力曲線の正常範囲内に収まり、88歳以降は右側に逸れた。考察今回の検査結果は、語音弁別能は80歳代以上で急激な低下を認めるという報告に違わないであろう。さらに例数を増やしたい。

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報、2024年127巻4号